読売新聞グループのデータビジネスの核となるのが、データ統合基盤「yomiuri ONE」。DX推進職は日々、データの整理や分析で接することになります。yomiuri ONEを支える技術とはどんなものなのでしょうか。また、DX推進職は実際にどう関わっているのでしょうか。
yomiuri ONEの構造は?
yomiuri ONEは、Google Cloudを活用して設けられているデータ基盤です。膨大なデータを高速で処理することに適したBigQueryというサービスを中心に用いています。データ抽出して格納し、適切な形式に変換するELTツールとして、Matillionも導入しています。

入ってくるデータはまず、読売新聞グループの各社やサービスが持つ約50のウェブサイトにユーザーが訪れた際のアクセス履歴。ユーザーがサイトにたどり着いた流入経路や、何かを購入したり申し込んだりしたかといった行動のデータをGoogle Analyticsで集め、それがyomiuri ONEに取り込まれます。
また、読売IDを持つ会員については、グループ各社で取得・保持している属性データに加え、たとえば読売巨人軍の試合のチケットを巨人軍のサイトで買い、別の日にはよみうりランドの入場券をランドのサイトで買っているといったネット上の行動のデータが、一人一人について蓄積されます。さらに、その人が、購入したチケットを持って東京ドームで試合を観戦した際に現地でグッズを買い、スマホアプリと連携したポイントを獲得すると、「来場した」というオフラインの行動もデータとなります。
こうしてyomiuri ONEに集められたデータは、顧客サービスに生かすための分析や、ターゲットを絞った広告展開のために活用されます。新聞販売やスポーツ、エンタメといった各事業部門がデータを見て施策を考えられるよう、可視化・分析ツールのData StudioやTableauを使ってダッシュボード化されたり、HubSpotといったマーケティングオートメーションツールに取り込まれたりします。
DX推進職は、このデータ基盤の維持管理や更新、他部署に向けたデータの整理や分析を一手に担っています。機能向上のために、最新の技術も学んでいきます。
エンジニアに聞く
yomiuri ONEが作られたのは2020年。DX推進職が2022年度に設けられるより以前の話で、当時は「エンジニア集団」である技術総合職が中心となって構築を手がけました。
技術総合職のエンジニアとしてDX推進本部に配属され、「データ基盤チーム」の中核になっている古殿文哉さんは、このyomiuri ONEの運用を支えてきました。2022年度に採用が始まったばかりの新しいDX推進職にとって、yomiuri ONEを扱っていくうえで何が必要なのか、聞きました。

「理系」「情報系」にとらわれなくて大丈夫
――理系の大学院を出てエンジニアという「バリバリ」のキャリアですが、入社後はどんな仕事を手がけてきましたか。
制作局という、どちらかというと社内向けのエンジニア部門で、新聞制作システムの運用保守などに携わってきました。一方で、入社4年目には読売巨人軍に出向して、会員システムの更新やグッズ販売のECサイト構築、公式アプリの刷新や東京ドームのDXプロジェクトなど、ユーザー向けのサービスに直結する部分にも関わってきました。社内だけにとどまっていないのは、少し珍しいキャリアかもしれません。
――BigQueryとかTableauといった単語を聞くと、理系でないとyomiuri ONEを扱う仕事は難しいように感じます。
そう思われがちかもしれませんが、まず最初に扱うのは分析系のツールやサービスからなので、いきなり高度なITスキルを求められるということはありません。すごくフラットに、入社して最初から勉強を始めても間に合う分野だと思います。もちろん、学生時代に情報工学系の勉強をしていれば、何かトラブルがあった時に対処しやすいといったメリットはありますが、あまりとらわれなくてもいいのではという気がしています。仕事はチームで進めるので、メンバーに偏りは少ない方がいいのではないでしょうか。
ただ、基本的なエンジニアの知識は早めに押さえてほしいとも思います。たとえば、社内で「このダッシュボードを閲覧できない」といった問い合わせが来た時に、原因はツールやサービスではなく社内の通信インフラにあったりする。そうしたネットワークとかサーバー管理といった情報工学的な知識は、ポイントを知っておくことで、いろいろな要請に的確に対応できるようになると思います。

サービスに接して「顧客目線」育てる
――入社してからでも、必要なスキルは学べるものなのでしょうか。
タスクを集約して、優先順位の高いものからチームメンバーに割り振るようにしているんですが、新人向けには習得してほしいスキルの一覧を別にまとめていて、実務の中で学ぶようにしています。まずHubSpotに習熟してほしかったら、そこと関わりの大きいタスクを一定期間集中的に割り振るようにしています。ある程度の知識が身についたら、次はGoogle Cloudのインフラを学んでもらおうとか、その次はMatillionの扱いに慣れてもらおうとか、順番にスキルが身につくようにアレンジしています。BigQueryは初めから全員共通して取り組んでもらっています。もちろん新人や若手には経験のある社員がつきながら、定期的にチームでタスクの進捗を振り返るので、フォローアップもしっかり行っています。
――スキルを習得しながら、DX推進職にはどんな姿勢を身につけてほしいと考えていますか。
DX推進職は、エンジニアも含めてビジネス視点で考えることが特に求められています。私自身、システムを扱うエンジニアですが、読売巨人軍などサービス側と接する仕事を通じて事業部門の課題を共有してもらっていましたし、事業のスポンサー営業の話や、新聞広告だけではない広告営業の話なども聞いてきました。それらの知識を踏まえ、ビジネス部門への寄与度の高いタスクから優先して取り組んでいます。
しかし、ビジネス視点だけでもいけないなと感じます。事業者側の都合で、ユーザーにとっては不親切な設計になっていることはよくあります。データを扱っていると集計した値や割合ばかりに目が行きがちですが、個々のユーザーの行動や感情まで意識できるようになってほしいですね。いろんなサービスに触れたり、いろんな人と接したりすることが、ビジネス視点も顧客目線も育てることにつながると思います。
DX推進職は、入社1~2年目に研修や基礎教育を受けながらグループ内の様々な事業を学び、「データエンジニア」「データサイエンティスト」「マーケター」の3領域から適性を見つけていきます。が、どの領域であっても欠かせないのは、古殿さんが話す「顧客目線」です。yomiuri ONEのデータを仕事道具に、経験を積むほど生活者と関わっていくフィールドが広がっていきます。